大きな本棚のあるリビング

私の実家はリビングに群馬のオーダーメイド家具店に作ってもらった本棚がありました。
父と母がそれぞれの本をそこにしまっていて、それぞれの趣味がよくわかる本棚でした。
父は海洋調査の仕事をしており、船や航海術や海図、気象予報などの専門書の他、時代小説や歴史関係が多かったと思います。
母の棚はいわゆる名作文学が国内外の作家問わず揃っていて、全集もありました。
そんな本棚のある生活が当たり前だったので、小学校高学年になると勝手にその本棚へ手を伸ばし、本を読む生活になっていきました。一番簡単に手に入る娯楽だったのです。
まずは母の蔵書の中からヘッセやリルケの詩集を読み、アガサクリスティーの推理小説や風と共に去りぬといった女性が活躍する小説を読みました。年齢が上がるにしたがって、日本の文豪と言われる人たちの作品にも手を出し、谷崎潤一郎の全集を枕元に置いて眠ったのを思い出します。
最近では痛快な切り口の時代小説がお気に入りで、父の蔵書の方に手を伸ばすことが多くなりました。
実際に本を読まなくても本棚があるというだけでどこか落ち着いた気持ちになります。手を伸ばせばすぐそこに別世界があり、自分の知識になってくれる宝物があると思うと、とても快いのです。たくさんの背表紙を見ているだけでも、自然とたくさんのキーワードが体の中に入っていくのだと思います。